天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

薔薇苑

薔薇苑

 川崎市向ヶ丘遊園に行ってきた。廃園になったと聞いたが、まさしく無残、見る影もなかった。
どうして自然を破壊してまで遊園を造るのか。結局経営が立ち行かなくなって廃園。それなら、初めから自然のままにしてボランティアで自然を守っていけばよかったのだ。薔薇苑だけが市の管理下に移り、ボランティアが世話をしている。薔薇苑の開園は明日までであった。今にして気がついたが、薔薇には一九六0年代と七0年代にヨーロッパで作出された種が目立った。


  フローラの真白き肌の汚されて廃園跡の薔薇苑に立つ
  人形を立たせて薔薇の写真撮る向ヶ丘遊園名のみ残れる
  くれなゐの四季房咲きの中輪種ユーロピアーナはオランダ
  生まれ


  パスカリはベルギー生まれ四季咲きの白く匂へる大輪の花
  濃き匂ひ淡きにほひの薔薇咲きて残り少なき生を愉しむ
  蠅来たり花の匂ひに酔いしるるドイツ生まれの薔薇
    サン・スプリット


  「のぞみ」とふ日本生れのつるばらのミニチュア置けり
    持ち去らないで!


     大輪の薔薇に近づくイヤリング  
     匂へればイヤリング揺る白き薔薇
     見納めの薔薇苑に押す車椅子
     老眼鏡薔薇の匂ひに目くるめく
     剪定の音薔薇苑の夕陽かな
     
 向ヶ丘遊園跡地から歩いて生田緑地へ行った。


  直立ちて緑陰なせり丈高きメタセコイアの梢見上ぐる
  直立ちて丈高ければ風に揺る生ける化石のメタセコイア
  水杉とふメタセコイアの小林にしたたるごとく鶯の声
  開拓の粗暴なる手が追ひ詰めし生田緑地の古民家の群


     カルガモの嘴せはし菖蒲園
     水音の谷戸の菖蒲田蛙鳴く
     古民家の二十三戸や不如帰