天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

DNA

  メキシコのアンガンゲオの霜月に突如あらはる黄金の樹は
  黄金のもみの木となる蝶のむれ旅路終へたるオオカバマダラ
  氷河期の記憶なるらしもみの木に冬ごもりせるオオカバマダラ
  霜ふれる標高三千メートルの山に冬越すオオカバマダラ
  いつせいに森をくらめて旅立てり数億頭のオオカバマダラ
  三世代かけて旅する蝶のありメキシコを発ちカナダまでゆく
  トウワタの若葉もとめて旅立てり北アメリカに三代を経る
  アメリカのトウワタの葉に産卵す交尾を終へし蝶の集団
  毒もてるトウワタの葉を食ふぶれば身はやすらけし蝶の幼虫
  カナダまで三代をかけ北上す三千五百キロの旅路を
  秋くればカナダを発てる四代目めざすははるかメキシコの森
  しまらくを旅の途中にやすめれど大草原にどしやぶりの雨
  おほいなる旅路終へたりもみの木をおほひつくせる
  オオカバマダラ


  メキシコとカナダの間をゆききするオオカバマダラのDNAは