DNA
メキシコのアンガンゲオの霜月に突如あらはる黄金の樹は
黄金のもみの木となる蝶のむれ旅路終へたるオオカバマダラ
氷河期の記憶なるらしもみの木に冬ごもりせるオオカバマダラ
霜ふれる標高三千メートルの山に冬越すオオカバマダラ
いつせいに森をくらめて旅立てり数億頭のオオカバマダラ
三世代かけて旅する蝶のありメキシコを発ちカナダまでゆく
トウワタの若葉もとめて旅立てり北アメリカに三代を経る
アメリカのトウワタの葉に産卵す交尾を終へし蝶の集団
毒もてるトウワタの葉を食ふぶれば身はやすらけし蝶の幼虫
カナダまで三代をかけ北上す三千五百キロの旅路を
秋くればカナダを発てる四代目めざすははるかメキシコの森
しまらくを旅の途中にやすめれど大草原にどしやぶりの雨
おほいなる旅路終へたりもみの木をおほひつくせる
オオカバマダラ
メキシコとカナダの間をゆききするオオカバマダラのDNAは