天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山蛭注意

聖観世音菩薩像

 ともかく体重を四キロ減らさなくてはならない。定期健康診断の結果である。小田急本厚木駅からバスに乗って飯山観音にゆく。飯山白山森林公園になっていて、ふもとは小さな温泉郷である。飯山観音は通称であり、正式には飯上山如意輪院長谷寺(ちょうこくじ)と号す。高野山真言宗で坂東六番の札所である。御詠歌は、「飯山寺建ち初めしよりつきせぬはいりあひ響く松風の音」という。参道の石段を登っていくと、中腹右側に樹齢約四百年というイヌマキが立っていて、傍にこの寺の開山という行基の歌碑がある。
  山鳥のほろほろとなくこゑきけばちちかとぞおもふ母かとぞおもふ

                         
 裏山を白山という。境内の山道には坂東三十三観音の石像が並んでいる。ちなみに坂東一番札所は、鎌倉の大蔵山・杉本寺である。その御詠歌は、「たのみあるしるべなりけりすぎもとのちかひはすえのよにもかはらじ」。
 公園のトイレに入る時に驚いた。蛭に注意せよとの貼紙である。テレビで見て山に蛭が繁殖していることは知っていたが、この貼紙によると、現在は北海道を除く全国の山で発生しているという。活動期間は、四月下旬から十月末まで。湿った落葉がたまっている場所に立ち入ったり荷物を置くのは禁物。汗や熱、炭酸ガスを感じて血に寄ってくる。防ぐ手立ては、食酢に塩を加えてスプレーにしてかけること。すぐに死ぬという。


  銅鐘を撞きて説くらむ親孝行楷の木二本風にそよげり
  イヌマキの古きが下に歌碑ありてちちははおもふ山鳥のこゑ
  何鳥かこつちへこつちへこつちへといざなひて啼く
  イヌマキの森


  看板に「ヤマビル注意」とありたれば入るをためらふ
  巡礼コース


  蛭あまた棲める頂き白山にこつち来いこつち来い鳥が
  いざなふ


  鹿猿につきて移れる蛭の群われを待つらむふるさとの山
  緑陰に蜜蜂供養塔立てり蜂のめぐみの人の生活


     水面には合歓の花影小鮎川
     み仏のたたす光や夏木立


 近くに金剛寺という古刹もあり、国指定重要文化財の木造阿弥陀如来坐像を安置するというが、荒れていて内部が見える状態にはなっていない。