天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

八月一日

 今日から八月。靖国神社拝殿社頭の掲示が替った。今回のパンフレットには、昭和天皇の御製が載っている。千鳥ヶ淵戦没者墓苑の碑にある次の歌である。
     国のため 命ささげし 人々の
     ことを思へば 胸せまりくる


 遺書の主人公は、航空軍司令部所属、昭和十九年十月にマニラ南方洋上で、あたら十七歳の命を散らした。遺書の末尾は母様姉様、八月四日 となっている。


  皇国の男子と生れ戦陣に臨むは無上の光栄なりと
  大病の癒えしを母に謝してのち戦に征くを報恩とせり
  征くのちの母のみとりをたのみつつ姉の嫁入願ふ弟
  航空軍司令部所属の十七歳マニラ南方海上に死す
  母姉の志とや皇恩に報いむ事を期して逝きける
  十七歳陸軍伍長の遺書を読む蝉かしましき靖国の杜


        御製への反歌
  国のため命ささげし「戦犯」の霊はいづくにさまよふらむか


     靖国や緋鯉真鯉を呼び寄する
     御霊屋の杜に蝉声湧き立てり
     やすくにや無念無念と蝉の声
     いつまでも池の上をとぶ蜻蛉かな
     おほいなる朝顔の花盆に浮く