天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

朝顔

朝顔

 明日の湘南ライナー券を藤沢に買いにでかけたついでに、江ノ島を散歩した。頻繁にきているので見慣れたものばかりだが、今日はふたつの発見をした。
先ずは、朝顔。どこが発見なのか?通常は家の垣根に植えたものであったり、観賞用のものであったりする。洗面器の水面を隠すほどの大輪の花を見たことがあるが、よくぞ丹精して改良したものだと感心する。今日見た朝顔はちょっと違う。崖の雑草の中にあった小さな花である。まさかいまどき野生種ではあるまい、と思ったので、俳句の季寄せに当たってみた。ヒルガオ科のつる草で日本には野生がなく、大昔薬草として中国を経て渡来したが、その後はもっぱら観賞用に栽培された、とある。万葉集に詠われているかを調べてみた。五首ある。最初に出てくるのは、山上憶良が詠んだ秋野花の歌である。
  萩の花尾花葛花なでしこの花女郎花また藤袴朝貌の花


つまり、秋の七草の一。五番目の歌は、作者不明だが、

  わが愛妻(めづま)人は離(さ)くれど朝顔の年さへこごと吾は
  離かるがへ


「私のいとしい妻を人は離そうとするけれども、朝顔が毎年からまるように私はどうして離れよう。」という解釈がなされている。現代からすれば、自分の妻なのになんで他人が離そうとするのか、と疑問が湧くが、当時は結婚制度が明確ではなかったのではないか。妻問い婚のように。

 次の発見は、江ノ島入口の竜の広告塔前にアポロ宇宙船のスカイラブ三号が展示されていたこと。NASAアポロ計画は、17号で月面着陸に成功した後、「スカイラブ計画」と名を変えて大気圏外宇宙空間での生活実験などに入る。江ノ島に展示された三号は、最終の有人飛行となった宇宙ステーションであり、アポロから乗り移った乗員三名が84日間の永きにわたって、この中で生活するという記録を打ち立てた。1974年(昭和49年)2月8日、太平洋上に着水して帰還した。
中を覗き込むと、計器類はすべて取払われ、配線の後だけが残っている。解説によると本物らしいが、いくらで取得したのか、何故江ノ島にあるのか、興味は尽きない。


     秋雨や大樹を小鳥棲み分けて

  秋雨の江ノ島にわが覗き込むアポロ宇宙船スカイラブ三号


追伸:「歌壇」十月号にある安田純生の「七草の女と男」に
   書かれていることが参考になる。即ち、
   「万葉集」に五首ある朝顔は、すべて桔梗とする説が一般的。
   「新古今集」に出てくる曽根好忠の次の歌に詠まれた朝顔
   現代のものに同じ可能性が高い。
       起きて見んと思ひしほどにかれにけり
       露よりけなる朝顔の花