天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石蕗の花

ツワブキ

 腰越、小動(こゆるぎ)、七里ガ浜を歩いた。鎌倉には日蓮宗の寺が多く、日蓮の伝説をふまえた事物が残されている。今日はじめて出会ったのは、別の「ぼたもち寺」。一般には、大町にある常栄寺が「ぼたもち寺」として有名であるが、日蓮の処刑場と言われている龍口寺に近い法源寺の別称も「ぼたもち寺」なのだ。
 もうひとつ気づいたこととして、俳句の冬の季語である石蕗の花をみつけた。日蓮上人雨乞旧跡の霊光寺においてであった。もう咲いている、という軽い驚き。


     光松根方に枯れし彼岸花
     酔芙蓉延寿の鐘をひとつ撞く
     早乙女の足跡消すや秋の潮
     海に向く雨乞の像石蕗の花
     秋ふかむ雨乞霊跡カケス啼く


  佛舎利の指ひとかけら納むるか白きストゥーパ金色の釈迦
  いつしかにぼたもちと呼ぶ握り飯ころびてつきし胡麻粒の砂
  やがてこの墓地に葬ふらる老人が娘にひかれ石階のぼる
  秋ふかみ白波たかき小動の海辺につどふサーファの群
  黒々と白波に立つサーファの背中(せな)を照らせる朝の太陽
  朝光をウェットスーツにまとひたり白波に立つ黒きサーファ
  渚辺を素足にあるく早乙女のふたりが残す小さき足跡
  行く先に稲村ガ崎の崖を見る人の足跡犬の足跡
  谷戸奥にはや咲きそめし石蕗の花日蓮上人祈雨の旧跡
  秋ふかみカケスの声の荒立ちて山の木の実を栗鼠とあらそふ