天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紅葉狩

紅葉と蜘蛛

 今日の神奈川県の天気予報では、雨の確率は終日三十%。ただ、東京は晴れということでもあり、大丈夫だろうと思って出かけた。釈 迢空(折口信夫)の歌集『倭をぐな』を持って。
 残念ながら相州大山寺の紅葉は時期尚早であった。おまけに石段両脇のもみじの葉数がえらく少ないように見えた。雨が降りそうな気配でもあり、今日は大山寺だけにして山を下りた。


     くもり日の色づきなげく紅葉狩
     鵙啼くやケーブルカーのきしる山
     谷川やもみぢに懸くる女郎蜘蛛
     蜜柑売る無人の棚や這子坂


  茶湯寺のわらべ地蔵の微笑みをいぢめの子等は何と見るらむ
  六地蔵わらべ地蔵の六体がそれぞれ並ぶ朝の勤行
  大山の空にとどまる雨雲に色づきわびし紅葉かへるで
  大山の暗き木立にカケス啼き日は翳りたり紅葉くすめる
  切先に龍がかみつき巻きつける剣をつたふ大山の水
  厄除けのかはらけ投げもせんかたなし紅葉にはやき大山の寺
  色満たぬ紅葉わびしき大山に厄除けせむと投ぐるかはらけ
  女坂(めのさか)に七不思議ありその一は岩突き出でし弘法の水
  女坂に七不思議ありその二には童の顔の子育て地蔵
  女坂に七不思議ありその三は爪に彫られし爪切り地蔵
  紅葉にいたらず散りしかへるでに思ひ深めて山を下りぬ