天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山は菜の花

吾妻山の菜の花

昨日とはうって変わって、今日は小春日和になった。最後の紅葉狩をせんと、二宮の吾妻山にいく。吾妻神社裏の銀杏黄葉はみごとであった。が、びっくりしたのは、山頂の菜の花がはや満開になっていたこと。周辺の木々の紅葉とのコントラストに感動した。
山を下りてから駅にいったん戻り、そこから徳富蘇峰記念館に回った。蘇峰は文学者徳富蘆花の兄でジャーナリスト。「国民之友」、「国民新聞」などを創刊した。国家主義を奉じたため、第二次大戦後には公職追放に遭った。終戦前に文化勲章を貰ったが、終戦後に返上している。晩年は、塩崎秘書の住まいの二宮を愛し、「蘇峰堂」と名付けてたびたび訪れた。九十五歳の天寿をまっとうしたが、塩崎氏が昭和四十四年に私財を投じて徳富蘇峰記念館を建設、著書、書簡など豊富な資料を納めた。未だ一度も中を見学したことはないが、毎週、月、水、金 と開館しているらしい。従来、庭には自由に入れたが、今日はロープで仕切ってある。庭には花咲く前の水仙が群生していた。


       朝光に銀杏ちりくる鳥居かな
       いやいやと羊歯ゆれやまぬ師走かな
       朝の陽にむかふ菜の花吾妻山
       菜の花や潮目たひらぐ相模灘
       山頂に師走むかふる榎かな
       吾妻山紅葉の中を滑り台
       葺き替のなりし社も師走かな
       目白鳴く庭の梢や蘇峰堂


  菜の花と紅葉と色を競ひたりほめそやすがにヒヨドリの群
  ヒヨドリの目にもまぶしき菜の花と紅葉の色と朝光の中
  みんなみの風にはや咲く菜の花に蜜蜂集ふ山の頂き
  葺き替への途中は外に出でませり木花咲爺媛の祠は
  菜の花も水仙も咲く吾妻山眼下に長寿 二宮の里
  百巻の「近世日本国民史」九十五歳を文に貫く
  億万長者出ている宝籤売り場人が列なす大安吉日