木俣 修のしらべ
先日は宮 柊二のことを紹介したが、同じく白秋の愛弟子に木俣 修がいる。「歌壇」十二月号には、木俣 修生誕百年記念の特集が組まれている。中に、日高堯子の評論で、木俣の韻律の特徴を解説しているところが参考になった。次のようなことを挙げている。
*二句切れで心の思いを直に伝える切迫の律をつくる。
わがこころひたにやさしも夜の天に星流るよと妻につげつつ
古写本に沁む寒き灯よ眼は閉ぢてはろけき学となげくひととき
*四句切れの特徴。四句から五句にかけての高揚から鎮静へと切り
替える巧みさ。情景や感情の動きを豊かなことばの律に巻き込み
つつ、その高ぶりの極点の四句で切り、結句の一句でその高揚の
呼吸を整えるように、あるいは情景の鎮魂をするように収める形。
生卵のみくだしつつしくしくにこころ悲しも霜の夜のあけ
*独特の愛用語「如(な)して」。「ごとく」「ように」の意味で
使った。対象に寄り添った、やわらかい作者の息を感じさせる言葉。
をとめにてありしその日のこゑ如して寒けき夜(よは)を
妻がいふ声
外(と)にはずむ木々のみどりを圧す如して五月(さつき)
まひるの吾子のうぶごゑ
*破調が多い。その調べは定型におさまる以上の魅力を感じさせる。
初句六音、七音が多いのも特徴。また、対句や繰り返し表現も多く、
様式的な美しさや力を一首の中に有効に生かしている。
起ちても涛(なみ)かがみても涛どうしやうもなくて見て
ゐる高志(こし)の冬涛
宮 柊二の歌集は読み込んだが、木俣の歌集はまともに読んだことがない。だが、さすがに白秋の弟子だけあって、抒情豊かである。この際、まとめて読んでみたくなった。