天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

師走の遊行寺

遊行寺の大銀杏

 ノートパソコンの通信機能も回復し、食事の合間に原稿を打ち込んでいる。ノロウィルスが怖いので遠出も気が進まず、近くの遊行寺に散歩にいってきた。朝日に大銀杏が照り映え、落葉の大地も金色に輝きこの世のものとも思えない。塔頭・長生院の小栗堂では、和尚さんが縁側を掃いていた。


      いろは坂黒門奥の大銀杏
      まだ散るか梢見上ぐる落葉掻
      もみぢ散る首なし地蔵のよだれかけ
      歳晩やうつむき立てる六地蔵
      乾坤を金色に染め大銀杏
      あからひく日の色まとふ大銀杏
      山茶花のちり乱れたる東司かな
      母子ともに進路相談笹子鳴く
      犬抱きて散歩終へたる師走かな
      歳晩の川に釣糸垂るるかな
      錦秋の里山照らす朝日かな


  敵味方戦死者なれば区別せず共に祀れる庭の片隅
  西に向き手合はす一遍上人銅像先にちる大銀杏
  大悲水子地蔵の下に朽ち果てし人形あまた年の瀬の風
  むらさきの蘭を飾りて年暮るる照手姫の墓鬼鹿毛の墓
  泡あまた流るる川のせせらぎも心なごまず歳晩の道
  歳晩の尾花枯れたる川縁に釣糸たるる人ぞかなしき
  錦秋の里山に開く隧道の口が吸い込む自動車の群
  エンジンをかけしままなるショベルカー刈田にのこり
  人影を見ず