天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

霜夜にかをる梅の花

 2月の靖国神社社頭掲示リーフレットから。昭和天皇の御製があり、お題は「社頭寒梅」で、昭和二十年の作。

    風さむき 霜夜の月に 世をいのる
    ひろまへきよく 梅かをるなり


 今月の遺書の主は、千葉県出身の陸軍軍曹。昭和十八年六月、千島列島東方の磐城島にて戦死、二十四歳。


  紅白の梅咲きにけり霊璽簿の御霊奉ずる靖国の庭
  娶らずて子をなさずして逝く不孝お許しあれと母に侘びたり
  「前略ー涙流されてくださるな」心気みだるる遺書の文面
  父、祖父の亡き後母の苦労をば理解せざるを無念と書けり
  皇国の乙女となりて嫁にゆき家庭つくれと妹に告ぐ
  父以上の立派な人になるべしと勉強すべしと弟に告ぐ
  弟に前途遠しと思ふなと兄は書きたり遺書の末尾に
  残さるる母、兄弟をかなしみて千島列島東方に死す
  世をいのる心に覚悟めされけむ霜夜にかをる靖国の梅