天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

風光る

春の断崖

 湘南海岸を江ノ島まで歩いた。さざ波の海に風が光った。黒いウェットスーツのサーファたちが小さな波に乗ろうとアザラシの如く海に浮んでいた。西方に雪を全身に被った富士が見えた。
何面かあるビーチバレーのコートでは、きたるべき夏に向けて熱心に練習をしていた。


      さざ波の湘南の海風光る
      春風や拍手わきたつイルカショー
      海岸のポプコーン拾ふ春の鳶
      余念なくさくらつひばむ目白かな
      春風や地は桃色のむすび絵馬
      
  梓弓春の朝日にかがやける雪の富士見ゆ湘南ビーチ
  高々とボール打ち上げ少女らのビーチバレーの声さんざめく
  ボール打つ姿勢説くらし砂蹴りて手をふりおろす湘南ビーチ
  熱心にコーチの仕草見てゐたりビーチバレーのコートのめぐり
  胡麻粒をまけるがに散る 海岸線ウェットスーツの
  サーファの群


  ぐんぐんと一筋伸ぶる飛行雲狙ふは雪の富士のいただき
  境川河口を発ちてたわたわと川上めざす黒き鵜の鳥
  袈裟懸けに斬られしごとく雪の富士飛行機雲の影を映せり
  花の字に似せて彫りたる鋏の絵 欅根方に鋏塚あり
  注連縄の欅囲みてかかりたるむすび絵馬あり春風に鳴る
  断崖に半身隠れてかがやけり春の日差しの雪の富士山
  きららかにきびなごかかる釣糸を撓めて吹くも如月の風