天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

真鶴岬・荒井城址

もくれんの莟

 JR東海道線湯河原駅の隣に真鶴駅がある。真鶴岬の入り口だが、そこから少し岬側に登ったところに、平安時代、周囲二キロメートルほどの谷戸構えの城があった。後三年の役(1083年)に源義家に従って活躍した荒井実継の居城である。鎌倉時代には土肥氏の出城となり、また後北条氏時代には狼煙台が置かれていたらしい。この付近にはもっと古く、縄文時代から人が棲んでおり、土器や石器類が出土している。真鶴岬周辺の海では、今でも魚介類が豊富だが、すぐに崖が立ち上がるので、人類は海辺ではなく岬の脊梁部に住まいを作ったのだろう。
 
  剪定の枝に若葉の萌え出づる楠の木多き古代の城
  如月の風に光れるもくれんの莟は今し花季を待つ
  魚市場水槽に棲む鯛、鱸、鯵、カワハギのまなこつやめく
  道の辺にイワシサヨリを吊るし干す今日なまぬるき如月の風