天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

躑躅

葉山花の木公園の躑躅

 なんとも画数の多い漢字である。分類は難しいらしいが、世界に850種、日本には50種程度が自生しているという。でもどうしてこの字を当てるのか? 群馬県つつじが岡公園のガイドによると、中国で毒性のあるツツジを羊が誤って食べたところ、足ぶみしてもがき、うずくまってしまった。このようになることを躑躅(てきちょく)と言う漢字で表すので、中国ではツツジの名に躑躅を当てた。日本へもその中国で使われていた表記が入って、つつじと読むようになったとのこと。
万葉集には長歌4首、短歌5首がのっている。短歌をすべてあげておく。白花は「しらつつじ」、赤花は「につつじ」、磯辺に咲くのは「いそつつじ」として詠まれた。「につつじ」は長歌にでてくる。


  水伝ふ磯の浦廻(うらみ)の石上(いそ)つつじ茂(も)く
  開(さ)く道をまた見なむかも
  風早の美保の浦廻の白つつじ見れどもさぶし亡き人思へば
  山越えて遠津の浜の石つつじわが来るまでに含みてあり待て
  細領巾(たくひれ)の鷺坂山の白躑躅われににほはね妹に
  示さむ
  女郎花咲く野に生ふる白つつじ知らぬこともて言はれしわが背
  
 躑躅は野生味があり、桜などと比べると荒々しい。躑躅の名所をわが散策ルートであげれば、逗子市に花の木公園と湘南国際村の二箇所がある。今回は、花の木公園から葉山御用邸の海岸を歩いた。


      陶然と川面に映る藤の花
      身のめぐり躑躅花咲く慰霊塔
      春嵐波にさからひカヌー漕ぐ
      下山川河口にあそぶ春の鴨
      鎧摺(あぶずり)の渚は白き春の潮


  葉桜の梢の先に湯のごとくつつじの山は風に揺れたり
  市長の名のみを刻める慰霊塔しらじら立ちてつつじ色褪す
  袈裟懸けに波切るウィンドサーフィンの白き羽根見ゆ
  葉山の海に


  三島座は笑ひと涙の夢芝居今年もきたる福祉会館