天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大君の楯

 靖国神社拝殿の今月の社頭掲示は、昭和19年7月に、マリアナ諸島で戦死した二十二歳の陸軍兵士の遺書である。昭和37年に詠まれた次の昭和天皇の御製も出ている。
     国のため たふれし人の 魂をしも
     つねなぐさめよ あかるく生きて


 遺書には、「海ゆかば」の歌詞から借りてきたような言葉が並ぶ。型にはまっているだけに、悲しみがじわりと伝わる。神社境内では、やがて始まる「みたま祭」の準備に、多数の名前入り黄提灯を忙しく掛けていた。安倍晋三小泉純一郎らの献灯もはやばやと並んでいる。


  大君の御楯となりて散る覚悟父母に宛てたる遺書に記せり
  出征に際して残す遺書なれば型にはまりて書きにけるかも
  銃をとり力戦奮闘一番の功名立てんと二十二歳は
  銃をとり出征するを御答恩と父母に書きたり陸軍の兵
  父母に書く遺書の末尾のかなしけれ靖国神社の社頭に待つと
  本懐をとげしやあはれ炎熱のマリアナ諸島にて戦死せし
  国のためたふれし人はやすらふや靖国神社のみたま祭に