天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

国上山・五合庵

五合庵と群像

 中越沖地震の影響を心配しながら新潟へ出かけた。短歌人・夏季全国集会に出席するためであったが、それよりなにより、良寛禅師の住んだ国上山・五合庵の跡ならびに会津八一晩年の住まいを訪ねる絶好の機会であった。日を追って順に紹介していこう。見て回ったいずれの場所でも地震の痕跡は皆無であったし、話題にもならなかった。被害は柏崎近辺に集中したようだ。
 8月3日、東京駅から上越新幹線に乗り、燕三条で下車。弥彦線で吉田駅まで行く。そこから国上山ビジターセンターまでタクシーに乗る。バスで分水までゆこうとしていったんバスに乗ったが、どうも不便になる予感がしたので、タクシーに乗り換えた。正解であった。1340円。
 朱に塗られた千眼堂吊橋を渡って五合庵へ。五合庵はもちろん当時のものではなく、何回か建て直されている。奥吉野の西行庵に似ていた。良寛については、以前に吉野秀雄の『良寛』を読んで歌に関する知識はすでに仕入れてある。
 良寛は地元の子供らと遊んだ後、五合庵まで歩いて帰ったわけだが、かなりの距離がある。1時間くらいは歩いたのであろう。


良寛句碑
       堂久保登盤閑勢閑毛天久留於知者可難
      (たくほどはかぜがもてくるおちばかな)


次に、下方にある真言宗・本覚院へ。

良寛歌碑
  いづくともかへ国すれどわがこころくがみのさとにまさるとこなし


そこから山路を登って国上寺へ。

鏡井戸近くの歌碑
  国上山岩の苔道ふみならしいくらびわれはまゐりけらしも


良寛像横の歌碑
  あしひきの山のたをりの紅葉ばを手折りてぞ来し雨の晴れ間に


弘法大師五鈷掛の松、倒木の横の歌碑
  国上の大殿の前の一つ松上つ枝は照る日をかくし
  中つ枝は鳥を住ましめしづ枝は甍にかかり
  時じくぞ霜は降れども時じくぞ風は吹けども
  千早ぶる神のみ代よりありけらし
  あやしき松ぞ国上の松は


 以下にわが作りし歌を。


       かなかながかなと鳴きたり五合庵
       苔よけて飛石つたふ夏木立
       夏木立物置兼ぬる舟御堂
       良寛銅像青む夏木立
       義経の持仏納めし夏木立
       暑ければ見上ぐるばかり国上山
       子供らと遊ぶ良寛夏木立
       越後線待てば風鈴鳴りにけり


  深緑は谷底までもなだれたり千眼堂の赤き吊橋
  良寛が歌にたたへし姿なし弘法大師五鈷掛の松
  大杉の梢さしくる夏の日を背に受けのぼる国上の山に