天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

湘南に遊ぶ

ヒザラガイ

 以前にも紹介したと思うが、わが国で海水浴が始まったのは、大磯の照ケ崎海岸である。江戸時代末期に生まれ、陸軍の軍医総監となった松本順が導入した。これにより気候温暖、風光明媚な大磯が全国的に有名になり、吉田茂など首相経験者を始め、政財界、文豪、芸術家が続々と別荘を建てた。明治の中頃以降からである。湘南という呼び名も大磯から出た。今や片瀬・江ノ島、逗子、葉山までが湘南であり、サーフィン、ヨット、ビーチバレーなど海浜の遊びのメッカになっている。


      をさな児が浮き輪にあそぶ河口かな
      雨雲の名残を下に雲の峰
      波に立つ黒きサーファ雲の峰
      茄子漬やロックに酌める芋焼酎
      藤村夫妻木陰すずしき庭の墓
      地福寺は手押しポンプの水の秋
      白犬と黒犬およぐ秋の潮
      青鳩のむれ待つ岩礁(いくり)秋の潮
      虎御前の碑にふりかかる蝉しぐれ
      縁側に汗噴きやまず鴫立庵


  ひときはに河口の波の高ければサーフボードを抱へてゆくも
  灼熱に耐へて腹這ふ若きらの背をじりじりと焼く紫外線
  似通へるパラソルあまた立ちたれば迷子はいづる片瀬の浜に
  山際にたなびく白き雲ありてさねさし相模の夏を逝かしむ
  灼熱の砂浜なれば履物を履きて歩けと監視所の声
  壁なせるテトラポッドに囲まれて海面にうかぶ今年かもめは
  岩を食み波音聞ける虫のむれ島を沈めき長き時の間
  飛びきたりしましとまれる岩礁に落ち着かざりし青鳩のむれ
  青鳩のむれを撮らむと大磯の岩礁に座りふたときを待つ
  岩礁の狭間の潮に身を沈め夏のほてりを冷ます乙女ら
  大磯の駅のベンチに涼みては夏の終りの蝉しぐれ聞く