天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

秋立つ

報国寺の竹林

 日本の古典ではよく知られた話なので、気が引けるが、立秋といえば、

  秋きぬと目にはさやかに見えねども風のおと
  にぞおどろかれぬる


古今和歌集藤原敏行の良く知られた名歌がある。また、新古今和歌集の七条院権太夫の次の歌もある。

  秋きぬと松吹く風も知られけりかならず荻の
  上葉ならねど


俳句では、これらの和歌を本歌取りした飯田蛇笏の次の名句がある。
      秋たつや川瀬にまじる風の音    『山廬集』


いずれも風の音から秋の立つ気配を感じている。今年の立秋は8月8日であった。


      仏前に木魚しづもる夏座敷
      ゆく雲の影にかげれる百日紅
      農業の無策を笑へ百日紅
      竹林の秋立つ朝のひかりかな
      竹林に抹茶いただく今日の秋      
      立秋の風に卒塔婆鳴りやまず
      コスモスや足利貞氏公之墓
      鶏頭の花咲く墓地のありにけり
      秋立つと谷戸の竹林さやぎけり
      鉄路くる音の近づく蝉しぐれ

 
  庭内はモータープールとなりにけり晶子泊まりし
  「ホテル鎌倉」