天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蓮の実

光則寺にて

 蓮は今、花の時期を過ぎ、蜂の巣状の花托になって実を結んでいる。蜂の巣状から古くハチスと呼ばれた。この実は堅い暗黒色の果皮で種子を包んでいる。種子の寿命は極めて長く、千年以上前の種子も発芽する。有名な大賀蓮は二千年前のもので、蓮の原種とされる。日本では、旧石器時代の地層から化石が出土している。


      蓋をせる星月夜の井蝉しぐれ
      のうぜんや女ばかりの写経場
      秋風や長谷大仏に窓ふたつ
      大仏の胎内を出づ蝉しぐれ
      油蝉鉄路の空にとび去りぬ


  金色の落葉ちりしく参道にここだも降り来ひぐらしの声
  丈六の観音像を見上げては虚しかりけり戦争やまず
  石灯篭石地蔵おく竹林の光に咲けるヤブランの花
  行く末はかくのごときか花咲かせ子を産みし後洞と朽ちたり
  もののふの無縁諸霊を鎮めたる苔の石碑に降る蝉しぐれ