天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

孔雀の歌

光則寺にて

 鎌倉長谷の光則寺に長生きの孔雀がいることを以前に紹介したが、これはインドクジャクで、原産地は、インドやパキスタンスリランカなどの南アジアにも分布する。孔雀が好んで食べる餌の虫や爬虫類には、毒をもった生物が多い。このため孔雀は益鳥として珍重された。仏教説話に孔雀明王が出てくるが、このへんに背景がある。
 日本に渡来したのは、推古天皇のときで、百済から朝廷に献納された。気高く誇り高い鳥である。


  長雨のあとのこころにひるがへり孔雀火のごと鳴く日きたりぬ
                     北原白秋
  亡命を選ばぬサダム・フセインは孔雀青(ピーコックブルー)の
  ターバンを巻く            小島ゆかり
                     
  思ひ出は孔雀の羽とうちひらき飽くなき貪婪の島にかへらむ
                     前川佐美雄
  孔雀われのうしろに番ひ曇りたる刃のごとし初夏に逅ふこころ
                     塚本邦雄


      秋風や檻の孔雀と見つめあふ