天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

「切れ」の由来(1)

べんけいかずら

 先日6500円で購入した『田中裕明全句集』(ふらんす堂)を読んでいる。田中は2004年12月、45歳の若さで生涯を閉じた。俳句の高い才能を惜しまれながら。それはともかく、彼の作品から俳句の「切れ」についてあらためて考えさせられた。世界最短詩形における基本要件について、である。難解な例だが、次のような作品は「切れ」の効果を期待して作られている。「切れ」の場所に/を入れておく。


      水取の空のあかるむ/煙草盆
      砂地だつたり岩場だつたり/菊膾
      狐火や/何をみどりと問はれても
      切尖のするどかりしを/ゆりかもめ


「切れ」の前句と後句の響き合いで生れる叙情が詩となるという手法である。古くは取り合わせ、近代になっては二物衝撃、モンタージュなどと呼ばれた。以前にも触れたが、これは連歌の昔からわが国で育まれた方法なのである。次に、歴史的経緯を見ていこう。