天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

宝物風入れ

石蕗の花

 毎年恒例になっているが、この時期、北鎌倉円覚寺では宝物の風入れが行われる。絵や古文書を方丈の壁にかけたり、机に広げて参拝客に見せる。舎利殿の境内にも入ることが許されて、僧が国宝の建築上の来歴・特徴を説明してくれる。また駅周辺の寺の参道では、匠の市と称して手作りのお土産品を売っている。


      山茶花や床ふみしめて矢を放つ
      舎利殿のなりたちを説く秋の僧
      煩悩をかたじけなしとお茶の花
      漱石の寄寓せし寺石蕗の花
      秋風や干支の土鈴をならべ売る
      秋風に古文書さらす円覚寺


  生存者一同とあり風化せる呑龍地蔵菩薩の碑文
  ながらへし白髪の身をかなしめりいまだはらせぬ一家の無念
  舎利殿の屋根に烏の飛びきたり僧の話に耳傾くる
  秋風にさらす方丈お宝の絵の色なべて泥のごとしも
  年を経て色くすみたるお宝の絵を凝視せり高僧の像
  桐箱に入れし古文書とり出だし風にさらせり今日文化の日
  お宝の絵に達磨像多きこと風入れに知る方丈の壁
  北鎌倉匠の市は参道にこまごま並べ手作りの品