天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紅葉狩

大船フラワーセンターにて

 周知のように紅葉の名所を訪ねてその美を愛でることが紅葉狩である。古代から平安時代にかけて広く行われていた。春の花見に対応する。黄葉も併せている。万葉集では黄葉とかいて「もみち」と清音で詠んだ。



  秋山の黄葉を茂み迷ひぬる妹を求めむ山道知らずも
                      柿本人麿

古今集新古今集では、宇治山、竜田川、大井川などが紅葉と番えて詠まれることが多かった。紅葉の名所があったのだ。


  紅葉狩二荒に行くとあかときの汽車乗るところ人なりとよむ
                      伊藤左千夫

二荒山は、日光の男体山の別称だが、左千夫の時代には紅葉の名所であったようだ。俳句では、秋の季語だが、傍題には、観楓という聞きなれない言葉もある。

      仁和寺を道の序や紅葉狩     松根東洋城
      観楓船曳く波うすくうすく展べ  堀 葦男


 鎌倉や藤沢でもやっと紅葉が見頃を迎えた。


  大いなる欅の末に鵙啼けり朝日に照れる黄葉の中
  黄葉の銀杏映せる池の面に波紋たてたりひとつ翡翠