天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

河豚

 冬に美味い魚の代表に、河豚がある。俳句でも冬の季語になっている。河豚にはいろいろな種類がある。クサフグ、コモンフグ、ヒガンフグ、ショウサイフグ、マフグ、メフグ、アカメフグ、トラフグ、シマフグ、ゴマフグ、カナフグ、サバフグ、キタマクラ 等。このうちトラフグは食用になる超高級魚である。
周知のように、卵巣や肝臓にテトロドトキシンという猛毒がある。毒の強い順にあげるとマフグ、トラフグ、ヒガンフグ、コモンフグ。マフグの雌一尾の臓物で三十三人の人間が死亡する。トラフグでは十三人 というから凄まじい。
河豚を食べるのは命がけであったところから、俳諧や川柳でよく詠まれたが、短歌ではあまり取り上げられない。河豚の刺身「てっさ」には、ボジョレヌーボーのワインが合うと思う。


      あらなんともなや昨日はすぎてふぐと汁 芭蕉
      河豚汁のわれ生きてゐる寝ざめ哉    蕪村
      ふぐ食はぬ奴にはみせな富士の山    一茶
      男の子われ河豚に賭けたる命かな    草城
      まづ煮立つふぐのしらこを箸にせよ   角川源義
      河豚を食べ過ぎたる人の顔となる    後藤比奈夫


  河豚くうていのち死なまし海棠に春うつくしく雨のふる日や
                         太田水穂