十二月三十日の吾妻山
行く年の終りに吾妻山に登った。等圧線の間隔が狭まって北風が強い朝。東斜面の枯れ木立の根方に水仙が花を咲かせている。ヒガンバナ科スイセン属のラッパスイセンだ。浅間神社の下から吾妻神社へ回り、そこから山頂に登って驚いた。満開の菜の花畑が広がっていた。
吾妻山朝日ににほふ水仙花
毛羽立てる師走白波相模灘
風に鳴る木々が落とせる木の実かな
松籟の山路かけゆく落葉かな
海阪をささくれ立ちてくる波の次第に高くなりにけるかも
おほかたの木は落葉せり朝の日にひときは映ゆるコナラの紅葉
風に鳴る木々の梢にヒヨドリが鳴き交はすなり飛び交はすなり
水仙の花愛でのぼる山頂は海を見下ろす菜の花畑
菜の花の光かがよふ山頂に乙女ふたりの高き嬌声
青白くかすめる水平線上にうすき影ひく三浦半島
葉を散らし実を落としたる山頂のエノキを鳴らす師走北風
行く年の風に吹かれて輝けり杉の根方のアオキの朱実
肌色の萼が包める赤き実を鳥がつひばむマユミの梢
松籟の風吹きわたる冬晴れに檜が匂ふ浅間神社
富士に湧く雲の塊つらなりて太平洋の空をかけゆく
街角に赤を点せる信号機師走の風にひどく揺れたり