天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

去年今年

蝋梅(鎌倉長谷寺)

 昨日の大晦日と今日の元日と併せておこう。昨日は、極楽寺、鎌倉権五郎神社、長谷寺、光則寺、高徳院と廻った。高徳院の裏庭には、与謝野晶子の有名な「美男にをはす」の歌碑があるが、門の左手塀際には次の歌碑もある。


  寺々のかねのさやけく鳴りひびきかまくら山に
  秋かぜのみつ           金子薫園
                       

高徳院の大仏には内外の観光客が参拝に来ていたが、大晦日となれば、他の場所はさすがに閑散としていた。


      波高し潮にごれる大晦日
      山茶花や年内閉門極楽寺
      小春日の寺の庭ゆく影法師
      石庭や日の血こごれる実千両
      年明くる真夜の境内初神
      年迎ふ赤地に白字「大黒天」


  丈高き波打ち寄せて崩れけり七里ガ浜の潮(うしほ)にごれる
  帰らざる年を惜しみて書き写す般若心経正座に耐へて
  唐蝋梅素心蝋梅咲き初めて春はま近き谷戸の寺庭
  帰らざる年を思へば頬にひく皹に風沁む長谷の大仏


 新年に当たり、長谷川櫂主宰「古志」一月号、同人の齢旦帳に載ったわが句を次に掲げて寿ぎとしよう。


      初春の光の海の片帆かな   天野 翔