天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海豚

イルカショー(江ノ島水族館)

 家族連れで混みあう正月の水族館で一番の人気は、やはりイルカショーである。ところで、イルカとは不思議な言葉である。どこの国の言葉なのか。英語では、ドルフィン。漢字の海豚は、当て字なのか。辞書では、冬の季語になっているが、手元の歳時記には、残念ながら例句が載っていない。短歌には比較的詠まれている。


  我が船をきほひ追ひ来るいるかの群ほどへて見ればなほし追ひ来る
                       川田 順
  イルカ飛ぶジャック・ナイフの瞬間もあっけなし吾は吾に
  永遠(とわ)に遠きや           佐佐木幸綱
                       

川田順の歌は、ありきたりな情景だが、「きほひ追ひ来る」「なほし追ひ来る」のリフレインが、少しせつない感じを与える。佐佐木幸綱の歌は、「吾は吾に永遠に遠きや」の理解が読者にできるかどうか。
本当の自分を知ることなど永遠にできない、イルカのジャンプの瞬間を見ていて、ふとそう感じた。「ジャック・ナイフ」が幸綱らしい措辞である。


  早乙女の合図にあはせジャンプする海豚に拍手白き富士の峰