探梅行
去年から今年にかけて、関東の太平洋沿岸地方は、随分暖かい日が続いている。熱海の梅園では梅が咲き始めているだろうか。毎年のことなので、今年も出かけてみた。蝋梅と一部の紅梅がわずかに花をつけているのみで、遠見には全く目立たない。梅祭は一月十四日からという。なんとも寒々しい。
梅の花は、ことに古典和歌でよく詠まれた。
ももしきの大宮人は暇あれや梅を挿頭してここに集へる
万葉集・作者不詳
おほぞらは梅のにほひに霞みつつ曇りもはてぬ春の夜の月
藤原定家
現代短歌では、次の一首をあげておく。
いづこにも貧しき路がよこたはり神の遊びのごとく白梅
玉城 徹
中山晋平記念館の庭には、黄花亜麻(キバナアマ)が金色の花を咲かせていた。原産地はヒマラヤ山脈という。
せせらぎの朝の飛石黄鶺鴒
山茶花や裏見の滝のしぶくまま
蝋梅の花の香を嗅ぐ朝日かな
熱海はや探梅行の不倫めき
せせらぎの音のみ耳にのこりけり梅はつぼみの熱海梅園
源泉を訪ねて押せるスタンプの七つを数ふ熱海夕暮