天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

歌人たちの鎌倉1

5月頃の鎌倉文学館

 鎌倉文学館では、昨年の12月21日から今年の4月20日まで、鎌倉にゆかりの歌人たちの短冊、歌集、原稿などの特別展示をしている。行って来た。ゆかりといっても、旅行で立ち寄った、友人の鎌倉の別荘で過ごした、ある期間住んだ といったさまざまの縁がある。これから何回かに分けて紹介していこう。できれば反歌など添えて。
先ずは鎌倉幕府三代将軍・源実朝。将軍としてよりも『金槐和歌集』を残した歌人として名をなした。


      雨そぼふれる朝に勝長寿院の梅
      ところどころさきけるを見て花に
      むすびつけ侍りし
  古寺のくち木の梅も春雨にそぼちて花もほころびにけり
   

 勝長寿院はかつて鎌倉にあった。実朝の次の歌の歌碑が、昭和十七年に鎌倉国宝館のそばに建てられた。後鳥羽上皇を慕って詠んだもの。

  山はさけうみはあせなむ世なりとも君にふた心わがあらめやも


なお、歌碑はもう一箇所、鎌倉商工会議所の構内にある。次の有名な歌。

  箱根路をわが越えくれば伊豆の海や沖の小島に波のよる見ゆ



      初春や砥ぎ師が座る長谷の露地
      うららかや文学館のバルコニー


  バルコニーに出でて眺むる鎌倉の海初春の光をかへす
  非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)をつひばめり文学館の
  庭に目白は


  鎌倉に住める歌人の多ければ鎌倉歌壇のあるを知りたり