天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石切場

真鶴岬・高浦海岸

 NHKの「小さな旅」で真鶴町の蜜柑畑の石垣と石切場を取り上げていた。真鶴で切り出された石材は、小田原城江戸城の石垣に使われたという。小田原城を攻めた豊臣軍の一夜城には、近江穴太衆(あのうしゅう)が築いた野面積(のづらづみ)の石垣が残っている。また正月の番組で万里の長城の放映を見た。ヨーロッパの古城と日本の城では石垣の作り方はどう違うのだろう。そんな興味があるので、今までになんども遊んだ真鶴岬に新たな気持で行ってみることにした。
 石切場は、高浦と山下浜に見られる。残念ながらこうした場所は安全の点から関係者以外中に入れない。近くの磯から眺めた。豊臣秀吉の時代から現在に至るまで延々と続いている石の切り出しとその膨大な量。昔の真鶴岬の海岸線は、場所にもよるがもう少し沖にあったのではないか。

      黒松の針の落葉や水仙
      三つ石の注連縄仰ぐ海鵜二羽


  時告ぐるチャイムひびかふ真鶴の尾根より見たる熱海初島
  松多き原生林を残しつつ石切り出せる断崖無残
  土を掘り石切り出せる断崖の中ほどにあり黄のショベルカー
  潮風に耐へて枝張る黒松の木の間より見ゆ伊豆の初島
  大いなる松が耐へ来し潮風に亀裂広がる断崖の岩
  真鶴の磯に並びて老夫婦弁当食ぶる涙ぐましも
  黒松の落葉あかるくちり敷ける根方に白き水仙の花
  松の木の太き切口生々し魚つき保安林の間伐
  ふるきより石切り出せる断崖のあやふかりけり真鶴岬
  緑色の船体なりき赤錆の湧きて流るる石運び船