天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

歌人たちの鎌倉4

長谷寺の蝋梅

 佐佐木信綱は大正十年、大町に別荘を建てた。『常盤木』や『思草』に鎌倉を詠んだ歌がある。


  滑川やみ夜涼しき川口に長谷のあかりを
  なつかしむなり
  かはづの声吾家(わぎへ)めぐりて名越山
  長勝寺山暮れ黒みたり        
  大き海に青垣山にかこまるるわが鎌倉は実朝生みつ       
  後の世を共にいのりし長谷寺の入相のひびきひとり聴くらむ 
  

鎌倉には二箇所に歌碑がある。
  雲に問へば雲はもだせり風にとへばかぜながれ去るいかにせましや
                         東慶寺墓地
  日ぐらしに見れどもあかずここにして富士は望むべし春の日秋の日
                         鎌倉山


 なお、孫の現代歌人佐佐木幸綱の歌碑が長谷寺の梵鐘に刻まれていることは、以前に紹介した。念のため再録しておこう、次の歌である。

  風の音(と)の遠き未来を輝きてうち渡るなり鐘の響きは