天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

若布

稲村ケ崎にて

 褐藻類コンブ目チガイソ科の海藻。冬から春に生育し、夏には枯れて流失する。現在では養殖も盛ん。万葉集では和海藻(にぎめ)としても詠まれている。俳句では、春の季語。


      みちのくの淋代の浜若布寄す       山口青邨
      激流に棹一本の若布刈舟(めかりぶね)  山口誓子

  比多潟(ひたがた)の磯の若布の立ち乱れ吾をか待つなも
  昨夜(きそ)も今夜(こよひ)も         万葉集  
  角島の迫門(せと)の稚海藻(わかめ)は人のむた荒かりしかど
  わがむたは和海藻(にきめ)           万葉集
  *角島の瀬戸のわかめは他人といると荒々しかったが、
   私といっしょの時は和らかい藻(め)よ。
   ・・・中西進の訳注による。


  砂浜に砂にまぶして乾してある若布のにほふ昼すぎにして
                       佐藤佐太郎
  渚より拾ふわかめを菜種など実る畑のかたはらに干す
                       板宮清治

 稲村ケ崎の浜にもたくさんの若布が打ち寄せていた。


  義貞の剣(つるぎ)の光まぶしみて若布刈り取る稲村ケ崎
  竹籠に長き若布を摘み入るる男一人の稲村ケ崎