マメ科のつる性落葉低木。野田藤、山藤の二種がある。ほかに夏藤という初夏に白花をつける自生種もある。古典和歌以来、藤、藤の花、藤波、藤波の花、藤の花房 などの形で大変よく詠まれてきた植物である。ちなみに万葉集では、二十八首ほどに出てくる。
恋しけば形見にせむとわが屋戸に植ゑし藤波いま咲きにけり
万葉集・山部赤人
よそに見てかへらむ人に藤の花はひまつはれよ枝は折るとも
古今集・遍昭
生ける世のさびしくならば此所に来よ谷にたなびく藤波の花
土屋文明
白藤のせつなきまでに重き房かかる力に人恋へといふ
米川千嘉子