天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大磯・高麗山

大磯にて

 五月に入ると湘南の山々の新緑が一層目に鮮やかに映る。それに混じる薄紫の山藤がなんとも気高く感じられる。それに惹かれて大磯の高麗山を歩いた。谷間の大樹を覆うように藤の花が纏わって咲いているが、道がないので近くには寄れない。ただ、山藤の花は、近づき過ぎるととりとめの無い色形になってしまう。
 高麗山を出てから、旧東海道を大磯海岸に向けて歩いた。
          

      蜜蜂の羽音せはしき藤の花


  大磯の小川の縁の桜桃は枝もたははに実をむすびたり
  谷川を遡りゆく大磯の山になだるる藤の花房
  繁茂せる羊歯に朝日のさしたれば恐竜の世を待たむ心地す
  仰ぎ見る梢に藤はなかりけり山路にちりしむらさきの花
  小さなる祠の横に富士を見る浅間山の著莪の花むら
  草むらに隠れてをりし何鳥かわが行く路を飛ばず走りぬ
  鳥除けの針金張れる池に揺るおたまじゃくしの黒き塊
  虎御前が朝な夕なに水汲みし井戸の脇なるこでまりの花
  地震に列車まろびて牛馬死すここに祀れる馬頭観音
  三界は欲界、色界、無色界萬霊供養の道の辺の石
  「魚金」の店先に干す鯵、金目ほどよき風につばめさへづる
  白波の寄する浜辺の長ければご豆のごとしキス釣の影