天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

枇杷

足柄郷にて

 バラ科の常緑高木。葉の形が楽器の琵琶に似ているところからの命名だが、「枇杷」の字は漢名からもってきた。この葉は関節の痛みに効くという。また木は粘り強いので、木刀や杖の材になる。冬に地味な白い花が咲くところが珍しい。



      黒衣より掌を出し神父枇杷をもぐ 津田清子
      黒髪を持つ憂さ枇杷の熟るるころ 三木照恵


  雨の日の室にちらばる枇杷のたね哀しきことを切におもふ
                       金子薫園
  枇杷の木に黄なる枇杷の実かがやくとわれ驚きて飛びくつがへる
                       北原白秋
  ふる雨の暗き空中に熟れそめし枇杷の木の実の黄なるただよひ
                       葛原妙子
  夏至光をまとふ枇杷の実とどきたる母に抒情のはるかなりけり
                       小中英之
  枇杷の実を食めば二つの種まろし世は見えがたき雨粒の底
                       三枝昂之