「古志」八月号
「古志」八月号・長谷川櫂主宰の句には難解なものがある。三句を取り上げてみよう。
木もれ日やあるかとみえて半夏生
★半夏生は、二十四節気のひとつを指す場合と
植物を指す場合とがある。中七の言い様では、
「ない」という言葉が後に省略されているようだ。
木もれ日の状態が、植物の半夏生があるかのように
錯覚させた、ということか。
金剛の人となるべく昼寝かな
★「金剛の人」とは? 辞書を見るしかない。最も近い言葉に
「金剛身」があった。金剛のように不壊の身、すなわち仏身の
こと。昼寝によって仏身になろう、極楽浄土を味わおうという
句意であろう。
明易や夢よりさめて夢の中
★夢の中で夢を見ていることは、稀に経験すること。あるいは、
この世も夢と見る見方は、昔からあるので、夢から覚めて現実に
戻ってもそこはやはり儚い夢の世界である、という句意か。
明け易い短夜なれば、夢か現か。全てが夢なのだ。
主宰の選に入った8月号のわが句を次に紹介しておく。五句の投句で、全部採られることはあまりない。
一身に受けてかなしき花吹雪
水張田の中を左右に水郡線
釣糸の赤き浮子見る山女かな
たんぽぽや区画にのこす道祖神
滝水の丈高ければなまめかし