天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

夾竹桃

近所の路傍にて

 常緑低木のキョウチクトウはインド原産。中国を経て江戸・享保年間に長崎へ移入されたという。中国名の「夾竹桃」がそのまま使われている。強心薬、利尿薬に用いられた。ただ毒があり、牛馬でも葉を食べて死ぬことがあるというから恐ろしい。
 夾竹桃の花を見ると、何故か原爆の日を思ってしまう。自分が経験したわけではないので、どこかで刷り込まれた感覚なのだ。広島でも長崎でも実際に原爆の被害を受けた人達が、目にした花が夾竹桃であったらしい。そしてその生命力に感動したという。ただ、俳句や短歌で、夾竹桃を原爆との関係で詠んだ作品をまだ見たことがない。


      病人に夾竹桃の赤きこと    高浜虚子
      夾竹桃羅馬に残るネロの鞭   田川飛旅子
      夾竹桃戦車は青き油こぼす   中村草田男


  すみやけく人も癒えよと待つときに夾竹桃は綻びにけり
                     長塚 節
  夾竹桃のくれなゐ猛く咲く見れば會て切実に祖国ありにき
                     加納一郎


  夏の朝野辺路の花を見つつゆく川瀬の音とわが足音と
  夏祭終りしあとの遊行寺の朝にのこれる提灯の列
  のぼるほど夏の天つ日かがやきてサッカーボールを追ひ
  かくる子等