天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鍬形

地球博物館にて

 クワガタムシ科に属する甲虫の総称。熱帯雨林に多いが、日本にもミヤマクワガタコクワガタノコギリクワガタなど40種ほどが生息するというから驚く。小学生の男の子が最も好きになる昆虫である。
季語に出てくる甲虫には、他に、カブトムシ(兜虫)、カミキリ(天牛)、玉虫、コガネムシ、天道虫、穀象、ハンミョウ(斑猫)、落し文、米搗虫、マイマイ などがいる。手元の『合本・俳句歳時記(第三版)』角川書店 から例句をあげておく。残念ながら「鍬形」の項目はなかった。
      ひつぱれる糸まつすぐや甲虫    高野素十
      髪切虫突きささるごと熔岩(らば)に消ゆ
                       能村登四郎
      金亀子擲つ闇の深さかな      高浜虚子
      てんと虫一兵われの死なざりし   安住 敦
      穀象といふ虫をりて妻泣かす    山口波津女
      爆死子の墓斑猫の行きどまり    下村ひろし
      佐渡よりの風の存問落し文     伊藤三十四
      勤しみし米搗虫が搗き厭きし    相生垣瓜人
      まひまひや雨後の円光とりもどし  川端茅舎      
  クワガタの番いを見いで狂喜せし一本も老いぬああ樹液涸れ
                       岡井 隆
  鍬形は鍬形たてて争へよ今朝桔梗の花も咲きたり
                       馬場あき子
  てのひらを持たねば哀し鍬形は肢の棘にて木にすがりいる
                       三井 修