天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蜘蛛の糸

二宮町吾妻山にて

 蜘蛛には、鬼グモ、女郎グモ、黄金グモなどがいる。それらが張る巣には、丸網、扇網、皿網、棚網などがある。例えば、鬼グモは丸網を張る。この巣にかかる昆虫は、糸で身動きできなくなるが、蜘蛛自身は体と脚から分泌する油脂で糸から自由である。


 
  せつせつと蜘蛛の糸とぶ庄内の晩秋を見ぬさびしきかなや
                        馬場あき子
  さくらからさくらに架けし春蜘蛛の糸かがよへりゆふべ過ぎつつ
                        小池 光


蜘蛛の糸」と言えば、芥川龍之介の名作を思う人が多いはず。次のような書き出しである。
「 ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。 」
 極楽とはいかないが、残暑ながら秋風のさわやかな吾妻山に登った。


      くるくると枯葉さがれる蜘蛛の糸
      吾妻山榎仰げば秋の風
      とりとめもなく風に揺れ秋桜
      秋風や赤き頭巾の六地蔵

      
  ヤブランとツキクサ並び花咲けり蝉くるほしく鳴く吾妻山
  山頂の西のなだりに人知れず蜘蛛の囲かかる水引の花
  蜘蛛の糸枯葉つるして光りたり空気うごけば枯葉がまはる
  蜘蛛の囲のま中に主静もりてその時を待つ秋風の中
  白、黄、赤、紫の花コスモスの風に揺るるはとりとめもなし
  名も知らぬ青き花にもふとりたる蜂のとびきて蜜舐めゆけり
  勝負前駐輪場とありければ何の勝負かあたり見回す