天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

白秋の『雲母集』(3)

短歌新聞社版

 更に『雲母集』の性格を代表する歌をいくつかあげておこう。


  城ヶ島の女子うららに裸となり見れば陰(ほと)出し
  よく寝たるかも


天真爛漫、古代神話の世界にあるような生命感である。


  桟橋にどかりと一本大鮪放り出されてありたり日暮


三崎漁港は、今でも日本有数の鮪の揚げ場であるが、大正初年の野太い情趣が出ている。


  ふと見つけて有難きかもさ緑の野菜のかげの大きな片足


大きな片足という部分をクローズアップする造型感覚でシュールな情景を描いている。


  森羅万象(ものなべて)寝しづみ紅きもろこしの房のみ動く
  醒めにけらしも


幽玄といえる自然の景物との一体感、アニミズムが感受される。