天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

運河(1)

川崎市にて

 文字通り物資を運ぶために造られた河。人工の水路でパナマ運河スエズ運河など小学生でもよく知っている。ただ、歴史的経緯は奥深い。古代エジプトでは、ナイルデルタからスエズ湾に食い込む「ファラオの運河」が造られた。中国では、隋の煬帝が作った大運河が有名で、華中の穀類を華南に運ぶなど画期的な水運を拓いた。カンボジアなどの歴代王朝も運河を活用した。ヨーロッパでは、ベニス、ベルギー、フランスなどに世界歴史遺産に指定された運河がある。日本においても大阪や江戸には、大阪城江戸城の周辺に運河が巡らされた。


  運河はるかに海にそそぐを見て居れどこの椅子もやがて立ちて
  行くべし                   斎藤 史
                         
  焼あとの運河のほとり歩むときいくばくの理想われを虐む
                         前田 透
  かすかなる歓びにしも譬ふべく運河の面の夕映えの黄ぞ
                         宮 柊二
  喪の花のやうに運河を過ぎゆきし流氷は明(あか)きはるの港に
                         塚本邦雄
  片方の赤きサンダル浮べつつ運河はまこと海に到るや
                         馬場あき子
  流木のぶつかる運河いたましく傷負ひし夜を無頼は言はず
                         春日井建