天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

高尾山(2)

琵琶瀧

 今年最後の紅葉狩として、師走の高尾山に登った。さすがに残っている紅葉は少なかった。それにしても老人のハイカーが多いのに驚く。 6号路の琵琶瀧から上方の崖路をとり3号路( かつら林コース )に出て標高599mの頂上に達した。
 高尾山頂は「関東の富士見100景」に選定されているのだが、あいにくとこの日この時間は曇りで、下界も遠方も定かならず。下りは1号路( 表参道コース )を歩いた。久しぶりの山路で、下山の時には膝が痛んだ。


      不景気に山の落葉のあたたかき
      笊に盛る柘榴に不況なかりけり
      だみ声のカケスも容れて山眠る
      山頂に人のにぎはふ師走かな
      掃き寄せて斜面におとす紅葉かな


  土曜日の通り見おろす朝マック不景気ながら心みちたり
  席に射す師走朝日の光線は電車の窓を通して熱き
  駅近き駐輪場に隙間なく銀の翼をやすめてゐたり
  さねさし相模之国の一之宮一筋伸ぶる松並木道
  結界の柵にま白き幣垂るる水行の滝琵琶瀧といふ
  水行の白衣に透ける赤き肌経唱ふれば湯気をたてたり
  落葉つむ瓦礫の道に踏み込めば師走すがしき琵琶瀧の音
  宿り木のやどりし跡の瘤ならむ崖に根付ける太きタブの木
  おほかたは落葉を終へし山間の紅葉をめぐるヒヨドリの恋
  木末から幹中ほどを失ひし何の大樹か枯れて立ちたり
  山裾をめぐりめぐりて高みゆく高尾山頂法螺貝の声
  谷ひとつへだつる山を登りきて合流したり高尾山頂
  山頂の見晴台に立ちたれど雲に隠るる多摩の山並
  垂れこむる雲の狭間を透ききたる光が射せる黄葉の谷
  あたたかき甘酒すする山頂はもみぢ散り敷き年を逝かしむ
  頂に雲は垂れたりまなかひにひとつかすめる薄墨の山
  散りのこるいろは紅葉のさみしさに痛み増したり山下りる足
  乗客が聞き耳立つる猫の声座席の下に籠ひとつあり