師走のズーラシア
冬の動物園ほど殺風景な場所はない。動物たちの活性が極端に落ちるからである。ズーラシアは横浜動物園のこと。あちらこちらの檻に、クリスマスの飾りが作られていて、飼育係が説明員になって訪問客を待ち構えていた。ただ、客がまばらなので、説明をする場が少なく、拍子抜けの体であった。全国の動物園で、いろいろ工夫して観客の数を増やすべく努力がなされている。経営が大変なのだ。
ズーラシア象が絵を描く師走かな
はや師走お見合ひ中のシシオザル
デジカメの画面の枠をはみ出せりドウクラングールの
長き白き尾
おとなしくつどひて朝の餌もらふオグロワラビー、
アカカンガルー
ドブネズミあまたが地よりわき出でて餌を奪へり
ギンケイの檻
偶蹄目ウシ科のゴールデンターキンは岩踏み締めて岩を
舐めたり
網の目をいともたやすくくぐり来て餌を奪へり
雀の群は
ユーラシアカワウソ眠る藁の上身を寄せあへば
ひとつ塊
ふる里の苦境を知るや檻に棲むホッキョクグマは
首ふりやまず
呼びたればふり向きざまに目を閉づる朝日まぶしき
シロフクロウは
人間の雌の匂ひもわかるらしモウコノロバの性器
伸びたり
食肉目イヌ科ヤブイヌつれだちてあかず巡りぬ
落葉の檻を
日本の師走の檻は寒からむシロミミキジは
くぐもりて啼く
園に棲む易き生活うべなはず師走を叫ぶライオンの群
冬眠の動物ならむ見わたせど姿の見えぬいくつかの檻