巣鴨プリズンを思う(1)
クリスマス・イブに4時間半の長時間ドラマ「あの戦争は何だったのか」を見た。池端俊策脚本、鴨下信一演出。TBSテレビにしては、偏向のないバランスのとれた内容だったので考えさせられた。配役も良かった。実際のニュース映像も織り交ぜてリアリティの迫力もあった。その中で一番印象的だったのは、東條英機に死刑判決が下った瞬間である。裁判長が「Death by Hanging」と宣告した時、ヘッドホンを着けた東條が、ゆっくり2度了解したというように頷いた、あのシーンである。悲惨な戦争の第一責任者として、百年の後も忌み嫌われるであろう人物が、輝いて見えた。自分ならあの戦争を回避できただろうか。いや現代の誰それなら回避できただろうか。
A級戦犯たちの辞世の詠草をいくつか紹介しておく。文芸作品ではないし、いい気なものだと腹立たしくなるが、これが現実であった。
我ゆくもまたこの土地にかへり来ん 国に報ゆることの足らねば
東條英機
さすらいの身の浮き雲も散りはてて 真如の月を仰ぐうれしさ
板垣征四郎
現身はとはの平和の人柱 七たび生まれ国に報いむ
木村兵太郎
世の人にのこさばやと思ふ言の葉は 自他平等誠の心
松井 石根
天かけりのぼりゆくらん魂は 君が代千代に護るならべし
土肥原 賢二
霜の夜を 思い切ったる門出かな 武藤 章