天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鎌倉・報国寺にて

 稲科の多年生植物の総称。数十年に一度、花が咲いて枯れる。竹の一生は開花結実して新しい個体が発生してから、次に開花するするまでの期間だが、それが何十年なのか分かっていないらしい。世界には1000種もあるという。日本では、孟宗竹、真竹、黒竹などが普通に見られる。地下茎によって繁殖するので、竹の領域はどんどん広がる。
 俳句では、竹の秋というと春の季語、逆に竹の春というと秋の季語。


      穴太衆住みしあたりの竹の秋  きくちつねこ
      竹の秋時雨亭とは石ばかり   行方克己


  梅の花散らまく惜しみわが園の竹の林に鶯鳴くも
                 万葉集・阿氏奥島
  枝にもる朝日の影のすくなさにすずしさふかき竹のおくかな
                 玉葉集・藤原為兼
  そぼ濡れて竹に雀がとまりたり二羽になりたりまた一羽来て
                     北原白秋
  をとこたちは竹を伐りしやゆく河の朝のひかりが胸へ折れくる
                     永井陽子


 竹の名所といえば京都の嵯峨野を思う。また、水上勉の小説「越前竹人形」を思う。鎌倉では、報国寺が竹の寺として知られる。昨日から降り続いていた雨が止んだので、出かけてみた。


      蝋梅のかをりの奥の矢倉かな
      竹林のきしみに鳴ける笹子かな
      梅の香や谷戸に流るる昨夜の雨


  梅の花にとどまる雨粒が映すやぐらの宝筺印塔
  をみならが笑ひてきたる竹林に笹子鳴きやむくやしかりけり