天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

日輪

寒川神社にて

 太陽はどこの古代文明においても信仰の対象になった。エジプトにおいてもインカにおいても。わが国の神話では、天照大御神に象徴される。現代においても太陽の恵みで地球の全ての生命が継続している。不思議である。
当然、古くから歌に詠まれている。「日」にかかる枕詞も次のように豊富である。


  あかねさす、あからひく、あまづたふ、あまてらす、
  あまてるや、あめなる、あめなるや、あめくるや、あらたまの、
  たかてらす、たかひかる、ひさかたの、まきさく、あめにある、
  ゆふだすき


  あかねさす日は照らせれどぬばたまの夜渡る月の隠(かく)らく
  惜しも                万葉集柿本人麻呂
  梅の花咲き散る春の永き日を見れども飽かぬ磯にもあるかも
                     万葉集・甘南伊香真人
  照す日はさやかに夏の空ながら時を過ぎたる松の下風
                       式子内親王
  日のやうに光のやうに水のやうに流れのやうに明日の日のやうに
                       前川佐美雄
  陽がさして雪が消えゆくひとしづくあとなきことを思ひつづくる
                       長沢美津

    
 わが国の神社では、神殿奥に大きな明鏡が置かれていて、人々はこれを拝む形になっている。鏡が神を象徴しているのだ。一月末になっても相模国一之宮の寒川神社には初詣や祈願の人々が絶えない。バスで参拝にきている団体もいる。この神社のことは、『續日本後紀』に仁明天皇承和十三年(846)、神階従五位下を授けられたとの記録がある。祭神は、寒川比古命寒川比女命の二柱。なんとも鄙びた神である。


       初詣破邪の剣(つるぎ)にかしこまる


  丈高き松の林に鎮もれり相模国一之宮寒川神社
  旭日に日の丸の旗ひるがへりわれは読みゐるすめろぎの歌
  逆光に撮る日輪の禍々し横に翳れる日の丸の旗
  おみくじを引きて読みゐるしかめ面寒川神社の寒き境内
  神殿に破邪の剣をふりかざす巫女をかしこみ姿勢正せり
  神殿のうすくらがりを切り裂ける破邪の剣の光妖しき
  初詣寒川神社のおみやげは八福餅と恵方まんぢゆう
  翡翠の飛ぶたまゆらの羽根の色相模太郎の水面よぎれり
  枯葦の岸に翡翠飛び込みてまた飛び出づるまでの時の間
  金色の光やどせる黒猫のまなこの前にたぢろぐ吾は