天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

横浜ズ-ラシアにて

 長鼻目、陸生の最大の哺乳類。化石に見る種類は多いが、現生はアフリカ象とアジア象2種である。わが国の古名は「きさ」。


     象潟(きさかた)や雨に西施がねぶの花
                     芭蕉


  木のもとに臥せる仏をうちかこみ象蛇どもの泣き居るところ
                     正岡子規
  真向(うまつこ)より皺だみ垂れし象の鼻どこからが鼻ぞ
  訊いて見よ子よ            北原白秋
                     
  すなほなる瞳やさしく親と子の象のあそべり山の真昼を
                     茅野雅子
  大正のマッチのラベルかなしいぞ球に乗る象日の丸をもつ
                     岡部桂一郎
  象といふ反時代的実在にかくも惹かれて女童と居り
                     岡井 隆
  さらば象さらば抹香鯨たち酔いて歌えど日は高きかも
                     佐佐木幸綱
  象の足の屑籠といふものあり 象の足きられ四つのくづかご
                     小池 光
  灰色の背中にしずかに粉をふいて春の象らが時間をあゆむ
                     井辻朱美