天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

枕詞の意味

『枕詞の暗号』

 短歌を学ぶカルチャーや歌会で、枕詞の意味を詳しく解説することはほとんど無いようだ。大方は、現在は意味が不明でおまじないみたいなもの、あるいは調べを整える効果があるという言い訳で通り過ぎる。なんとも淋しい。こんな思いに応えてくれる本が『枕詞千年の謎』(新潮社)でありそれを『枕詞の暗号』(新潮社)と改題した文庫本である。昔読んだはずだが、改題したものとは気づかず、二冊ともアマゾンドットコムで古本を購入してしまった。まあそれはよいとして、この本では、よく知られた枕詞について、その意味を推理している。なかなか説得力があって興味深い。ただ残念ながら、古典文学の学術世界では認知されていないようである。認知されていれば、もっとカルチャーなどで紹介されるはず。
 著者・藤村由加(これは女性執筆者四人の頭文字をとったペンネーム)の論考の基本は、陰陽五行説と字形分解にあった。枕詞が生まれた時代を考えると陰陽五行説の重要性・影響力の大きさがよく理解できるし、漢字の生まれを考慮すれば、字形分解による推理も納得がいくのである。万葉集の例から。

  青丹吉奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり
における「あをによし」
  玉葛実ならぬ樹にはちはやぶる神そつくとふならぬ樹ごとに
における「ちはやぶる」