りんご
日本固有種もあったらしいが、小さく堅いので、明治期に輸入された西洋種をもとに改良が進んで、現在のような多種多様なりんごが生まれた。国光、紅玉、スターキング、富士、王林などはよく知られた名前である。主な産地は青森、長野だが北海道でも栽培が盛んである。早生種は七、八月に、普通種は十月ころに収穫。りんごで最も有名な短歌は白秋の次のもの。
君かへす朝の敷石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ
北原白秋
日の当る林檎おかれし卓あればなべて平安といふを憎みつ
尾崎左永子
紅玉を裂く若き母みずからも種の起源の香をただよわせ
三枝昂之
青林檎与へしことを唯一の積極として別れ来にけり
河野裕子
そのかみの山の林檎はまつすぐな香気に満ちて
なりたるものを 小池 光
りんごの木や花を詠んだ歌もあげておこう。
ふかぶかと林檎樹林の花あかり夕べの頃はこころもしろし
斉藤 史
月日経て苦しきものは積るらし瘤ある林檎樹花散らしをり
馬場あき子
東北へ旅行く父へ降りかかるりんごの花か冷えぞ身に沁む
佐佐木幸綱