天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

かりん

鎌倉・寿福寺墓地にて

 花梨はバラ科の落葉高木。ギリシャ語のchaino(開ける)+melon(リンゴ)が語源で、「裂けたリンゴ」の意味。原産は中国東部。成熟した果実には果糖、ビタミンC、リンゴ酸、クエン酸、タンニン、アミグダリンなどがある。トリテルペン化合物の芳しい香を放つ。実は10月から11月にかけて収穫されるが、耐寒性にすぐれており枝先に冬を越す。



  井の端に落つれば拾ふくわりんの実数のたまるはうれしきものを
                        岡 麓
  ゆふ庭にくわりんのにほひ熟れゐたり君によりつつ然か思ひたり
                        中村憲吉
  くわりん一果のにほへる儿愛染に遠くゐる夜の更けゆかんとす
                        木俣 修
  たまひたる花梨一果を掌に載せて濃密になりゆくこころ
                        高嶋健一

      くわりんあり鳥羽僧正の絵巻あり   後藤夜半
      昏れかかる山を幾重にくわりんの実    矢島渚男


  春待ちてもちこたへたる花梨の実葉のちり果てし冬木の枝に